言わずと知れた、ビットコインに次ぐ仮想通貨の二番手として人気が高いイーサリアム。そんなイーサリアムは、2013年に発案され、2015年に一般公開されてから紆余曲折ありながらも実に10年以上の月日が流れ現在の価値を築いていきました。ですが、保有はしていても過去にどんな出来事があってここまでの価値となったか知っている方は少ないのではないでしょうか。そこで今回はイーサリアムが今の価値になるまでどんなことがあったの?これから購入したいから、ちゃんと過去の出来事を知っておきたい仮想通貨について見識を深めたい!このような方に向けて、わかりやすくイーサリアムの歴史を解説していきたいと思います。この記事の要約イーサリアムは、イーサリアムプラットフォームのネイティブトークンであり、スマートコントラクトやDAppsの開発基盤として開発された2013年にヴィタリック・ブテリンにより構想され、2014年にクラウドセールでおよそ50億円を集め、2015年にβ版がリリースされた2016年にはThe DAO事件が発生し、イーサリアムとイーサリアムクラシックへのハードフォークが行われた2017年にはICOブームとDeFiの発展を牽引2021年にLondonハードフォーク、2022年のMergeアップグレードと2023年のShanghaiアップグレードを通してPoWからPoSへの完全移行を実施したイーサリアム(ETH)とは?ビットコインとの違いまずは簡単にイーサリアムについて紹介します。イーサリアムは仮想通貨の一つで、現在、仮想通貨時価総額ランキングではビットコインに次ぐ2位の位置につけており、アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)のアイコン的な存在です。2013年にヴィタリック・ブテリンにより発案、開発され、2015年に一般公開されました。イーサリアムは本来イーサリアムプラットフォームのネイティブトークンであり、プラットフォームとしてはスマートコントラクトやDApps(分残型アプリケーション)の開発基盤として現在の仮想通貨ネットワークの基礎を形作りました。スマートコントラクトは簡単に言うと「ブロックチェーン上で動作する、自動的に契約・取引を行ってくれるプログラム」のことで、これを組み合わせることでDEXを始めとするDAppsが開発されてきました。通貨・資産として開発されてきたビットコインにはこのような機能がなく、この点がビットコインとイーサリアムの最大の違いと言えます。イーサリアムのプラットフォームとしての側面は仮想通貨の歴史に非常に重要で、イーサリアムがあったからこそDeFiやNFTが発展し普及してきた面があります。ビットコインが仮想通貨の資産的な価値を牽引してきたとするならば、イーサリアムは仮想通貨の普及や技術的な発展を牽引してきた存在と言えるかもしれません。イーサリアムの歴史年表イーサリアムの歴史を簡単に年表形式で紹介します。時期出来事2013年ヴィタリック・ブテリンにより「Ethereum white paper」が書かれる2014年2月最初のα版クライアントがリリース2014年6月ビットコインとイーサリアムを交換するクラウドセールを実施およそ20億円もの資金を集める2015年7月β版クライアント「Frontier」リリースし、一般公開される2016年7月The DAO事件発生2017年~ICOブームとDeFiの発展を牽引2021年8月Londonハードフォーク実施ガス代の入札システムが一新される2022年9月Mergeアップグレード実施コンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSへ移行される2023年4月Shanghaiアップグレード実施ステーキング機能が整理されPoSへの完全移行が完了イーサリアム誕生の背景(2013〜2015年)ヴィタリック・ブテリンによる開発イーサリアムが最初に構想されたのは2013年、当時カナダのウォータールー大学の学生であったヴィタリック・ブテリンによって「Ethereum white paper」が書かれたのが始まりでした。このホワイトペーパーは、マイクロソフトでリサーチサイエンティストとして働いていたギャビン・ウッドによって学術的な整理が行われ、開発が進められていきました。α版となるイーサリアムプラットフォームの開発が進められ、2014年2月には最初期のクライアントがリリース、その後も幾度かα版のリリースを経た後、2015年7月30日に最初のβ版である「Frontier」がリリースされました。ICOでの資金調達とローンチ2014年6月、α版の開発が進められる中、仮想通貨としてのイーサリアムとビットコインを交換する形のクラウドセールが行われました。このクラウドセールは、ビットコインを送付することで、イーサリアムのローンチ時にイーサリアムウォレットアドレスと送付したビットコインに相当するイーサリアムを取得できる形式でした。このクラウドセールでは約31,000BTC、当時の価格にしておよそ20億円もの資金が集まり、この資金はイーサリアムプラットフォームの開発や研究、法的な費用などに用いられました。クラウドセールでの販売価格は1ETHあたり約0.30ドル、当時日本円にして1ETHあたり約30円強となっており、およそ6000万ETHがこのクラウドセールで購入されました。初期の歴史と課題(2016年)The DAO事件2016年7月、イーサリアムがローンチされて1年弱、価格は順調に上昇していったもののまだまだ黎明期であったこの時期に、イーサリアム史上最大とも呼ばれる事件が起こります。それは、The DAO事件です。DAOとは「特定の所有者や管理者が存在せず、プロジェクトや事業が進められていく形態の組織」のことで、特にイーサリアムのようなプラットフォームを利用して作られるようにもなりました。The DAOもそんなDAOの一つで、イーサリアムネットワーク上に作られた、投資家を集め、参加者の投票によって投資先を決定し、利益が上がれば参加者に分配されるという形式のDAOでした。そんなThe DAOは注目を集め、The DAOで用いられるガバナンストークンDAOのICOでは約150億円(約1207万ETH)もの資金を集めることに成功しました。しかし、2016年7月、The DAOで用いていたスマートコントラクトの脆弱性を突かれ、ICOで集めた資金の30%超、約364万ETH、当時の価格にして約52億円もの資金が盗難されてしまいました。これは今でもイーサリアム史上最大規模のハッキング事件として語り継がれています。この影響で、The DAO事件の直前には1ETHあたり2,000円強だったところから、一気に1ETHあたり1,100円程度にまで急落しました。イーサリアムとイーサリアムクラシックへのハードフォークThe DAO事件の発生後、対処としてイーサリアムコミュニティは、従来のイーサリアムのブロックチェーンをイーサリアムクラシック(ETC)、新たなチェーンをイーサリアム(ETH)として分岐させるハードフォークを行いました。The DAO事件に対する対処としては主に二通りのアップデート、通貨の分岐が発生しない「ソフトフォーク」と、分岐が発生する「ハードフォーク」が議論されました。ソフトフォークでは、盗難を行ったアドレスや取引を凍結することができますが、ロールバックが行われないため被害者に資金を戻すことはできません。ハードフォークでは、盗難が起こったブロックチェーンと別でロールバックが行われたブロックチェーンが作られるため、盗難自体がなかったことになり、被害者に資金を戻すことができます。議論は紛糾しましたが、最終的にハードフォークの対応を取ることになり、イーサリアムクラシック(ETC)とイーサリアム(ETH)に分岐していくこととなりました。成長期(2017〜2020年)ICOブームとDeFiの誕生2017年、仮想通貨業界ではICOブームが巻き起こり、数多の仮想通貨プロジェクトが立ち上がっては資金を集めてローンチされていきました。ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、簡単に言うと「未上場の通貨を事前に決められた一定の価格で販売を行う」という販売方式のことです。このブームにはイーサリアムが大きく関わっていました。ビットコインと異なり、アプリやブロックチェーン開発のプラットフォームとして開発が進められたイーサリアムは、DAppsや新たな仮想通貨を開発するための受け皿となっていました。そのため、イーサリアムプラットフォームを利用して開発し、イーサリアムネットワークを通じてICOを行うという手法が普及し、ICOブームを巻き起こしていったのです。そして、これに追随する形で2018年頃からDeFi(分散型金融)の普及と発展が急激に進んでいきます。イーサリアムプラットフォームを利用することでネットワーク上で取引できるDEX(分散型取引所)の開発が可能となり、いくつものDEXがイーサリアムネットワーク上に誕生していきました。DEXの開発が進められていく中で、2018年8月頃には海外の開発者の呼びかけにより、DeFiのコミュニティ活動が始まります。2020年頃にはDEX上でできる「イールドファーミング」と呼ばれる、CEX(中央集権取引所)では考えられないような高利率で運用できる取引が話題となり、DeFiの普及は加速していきました。この時期、2017年に入る頃には1ETHあたり1,500円前後だったところから、2018年のピーク時には1ETHあたり14,000円を超える価格にまで上昇する場面がありました。スケーラビリティ問題の浮上2020年頃、DeFiが急速に拡大していき、順調にイーサリアムが浸透していく中で、仮想通貨にとって避けられない問題であるスケーラビリティの問題が議論されるようになっていきました。スケーラビリティとは、仮想通貨に限らずIT全般で用いられる用語で、システムやネットワークなどの拡張性を意味します。スケーラビリティの問題とは、簡単に言うと「規模の拡大・負荷が増大した時に対応できるか」という問題を表しています。仮想通貨が普及し、ネットワークのユーザーが増えるのは喜ばしいことですが、ユーザーや取引件数が増えれば増えるほど、負荷が増大していきネットワークを圧迫していきます。仮想通貨は、常に普及すればスケーラビリティの問題が発生するというジレンマを抱えており、イーサリアムもその例に漏れず2020年頃からこの問題が叫ばれるようになっていきました。大型アップデートと転換期(2021〜2022年)Londonハードフォーク2021年8月、Londonハードフォークと呼ばれる大型アップデートが実施されました。このアップデートはイーサリアムのマイニングや手数料の仕組みに変更を加えるもので、当時大きな話題となりました。数あるアップデート内容の中でも特に話題となったのは、ガス代の入札方法の変化です。イーサリアムネットワーク上で取引を行うには「ガス代」と呼ばれる手数料を支払う必要があります。これまでは、取引の承認作業であるマイニングを行うマイナーに対して入札形式で高額なガス代を支払った者から優先的に処理される形式だったため、ガス代が理不尽に高くなったり、不安定になったりしてきました。ですが、Londonハードフォークではこのガス代の入札を自動化し、承認作業の優先度ではなくネットワークの混雑具合でガス代が自動的に制御されるようになったため、理不尽に高額になったり、短時間で不安定に変動したりするリスクが低下しました。この時期、2021年7月には価格が下落し1ETHあたり230,000円前後と低迷気味だったところから、8月には回復傾向に転じ、1ETHあたり350,000円程度にまで回復しました。MergeアップグレードによるPoS移行2022年9月、Mergeアップグレードと呼ばれるアップデートが行われました。Mergeアップグレードの最大の変更点は、コンセンサスアルゴリズムのPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)への変更ということで、仮想通貨業界では非常に大きな話題となりました。コンセンサスアルゴリズムとは、簡単に言うと「取引の承認作業の仕組み」のことで、ビットコインで採用しているPoWという仕組みではマイニングによって承認が行われます。元々、イーサリアムもビットコインと同じPoWを採用しており、マイニングによって承認が行われていました。ですが、マイニングは多量の電力を消費し環境に悪いことが問題視されていた上、ユーザーが増えネットワーク負荷が高くなってきたため、それだけマイニングによる電力消費も上がってしまいました。マイニングは競って計算処理を行うため、マイニング参加者が増えたりネットワーク負荷が高まったりすれば電力消費が上昇しますが、一方のステーキングは計算処理を行う必要がないため比較的環境に優しいです。そのため、イーサリアムはコンセンサスアルゴリズムをマイニングによる承認システムであるPoWから、ステーキングによる承認システムであるPoSに変更することとなったのです。大型アップデートとなりましたが、2022年は仮想通貨市場全体としてネガティブな出来事が多くあったため低調気味で、2022年9月は1ETHあたり220,000円前後を推移しました。現在と最新動向(2023〜2025年)Shanghaiアップグレード2023年4月、Shanghaiアップグレードと呼ばれるアップデートが行われました。このアップデートは、前年に行われたコンセンサスアルゴリズムをPoSへと変更するMergeアップグレードと連動するアップデートでした。実はMergeアップグレード時点ではコンセンサスアルゴリズムのPoSへの移行は実施したものの、それに伴ってステーキングを始めたユーザーに対して、ステーキングの解除や報酬の引き出し機能は提供されていませんでした。Shanghaiアップグレードはこれらの機能を改めて追加し、PoSへの完全な移行を実現するためのアップデートでした。PoSへの移行というとMergeアップグレードが取り上げられがちですが、実際にはいくつかのアップデートを重ねて実現した段階的な移行だったのです。期待感からかアップグレードに伴い小さな上昇相場を形成したものの、影響は小さく、1ETHあたり250,000円前後で推移していきました。ETF承認やL2(レイヤー2)の拡大以後もイーサリアムは投資対象としても、プラットフォームとしても、活躍の場を広げていきました。2023年以降の大きなイベントとしては、ETFの承認があります。2023年10月に先物ETFが米SECに承認され、その後一年もたたない2024年5月に現物ETFが承認されました。どちらの承認も先んじてビットコインの承認が行われており、これらビットコインとイーサリアムの承認を契機にXRPやソラナなどアルトコインのETF申請が次々と行われるようになっていきました。また、2023年以降に限った話ではないですが、イーサリアムのL2(レイヤー2)の拡大も現在まで行われ続けています。L2とは、基礎となるL1(レイヤー1)のネットワーク上に追加で構築されたネットワークのことで、スケーラビリティの向上や取引の高速化を目的に構築されます。技術的には複雑な話になってしまいますが、投資家目線から簡単に言うと「イーサリアムネットワークを下敷きにして構築されたネットワーク」のことを指します。イーサリアムを基盤とする有名なL2ネットワークには、PolygonネットワークやArbitrumネットワーク、Baseネットワークなどがあります。これらL2ネットワークは、現在でも新たなネットワークの開発や既存ネットワークの維持・アップデートが続けられており、発展を続けています。まとめここまでイーサリアムの歴史について紹介してきました。こうしてみると歴史的には単なる通貨としての側面よりもプラットフォームとしての側面が重要で、現在の仮想通貨の基盤を形作ったといっても過言ではない功績があります。また、ローンチから8年経過した2023年にコンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSに移行するという非常に大きなアップデートを行っており、未だに柔軟で活発な開発が行われていることが伺えます。こうした功績に裏付けられた信頼性と、長年経っても改善が続けられている姿勢によって、イーサリアムはビットコインに次ぐNo2の立ち位置を確固たるものにしているようですね。さて、本記事で紹介した出来事はイーサリアムの歴史の中でも特に大きな出来事だけで、ほんの一部に過ぎません。現在の資産価値が作り上げられた理由を知っておくことは投資においても重要ですので、ぜひ一度保有している通貨の歴史について調べてみてはいかがでしょうか。関連記事【~2008年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.1イーサリアムにかかる税金とは?ステーキングや売却、送金時の損益計算や確定申告方法まで徹底解説【仮想通貨(暗号資産)】イーサリアム(ETH)ETFとは?日本で買える?特徴・仕組みやメリット、承認時期を解説