近年、仮想通貨を保有するだけでなく、それを貸し付けて(レンディング)、対価として利息を得る運用方法が注目を集めています。特に、ビットレンディングは高い利率と安全性を両立させようとするサービスとして、多くの法人投資家から関心を集めています。しかし、法人がビットレンディングを利用して収益を得た場合、「レンディングの収益にどのような税金がかかるのか」「損益計算や仕訳はどのように行えば良いのか」といった、法人特有の税務・会計処理について不安を感じる方も少なくありません。そこでこの記事では、「ビットレンディングの利益にかかる法人の税金は?」という疑問に答え、法人税法上の基本的な取り扱いから、レンディング収益の損益計算方法と具体的な仕訳までを、具体例を交えて徹底的に解説します。この記事を読むことで、法人がビットレンディングの収益を適切に処理し、安心して事業に集中できるようになります。この記事の要約仮想通貨レンディングは、保有している暗号資産を貸し付けて利息(貸借料)を得る運用方法ビットレンディングは、通貨ごとの利率が高めに設定されている点に加え、返還手数料が年4回まで無料、紹介者特典がある点が特徴法人の場合、レンディング収益は法人税の課税対象となり、受領時点の時価で利益計上する貸し付け中の暗号資産でも、一定要件を満たす場合は期末時価評価の対象となり、評価損益が発生する国内事業者のレンディング収益は消費税が課税される整理になり得るため、税込処理・税抜処理を含めて課税区分の整理が重要会計処理は「受領時に受取利息などで計上」→「売却時に取得価額との差額を売却損益として計上」の2段階で整理する仮想通貨のレンディングとは?仮想通貨のレンディング(貸し付け)とは、保有している仮想通貨を第三者(取引所やレンディングサービス事業者など)に貸し付け、その対価として期間に応じた利息を受け取る運用方法です。一般的に、レンディング期間中は対象の暗号資産を自由に売買できない(ロックされる)形になります。法人の場合は、受け取った報酬の利益計上だけでなく、期末時点の時価評価や、消費税の課税関係まで含めて整理しておくのが重要です。レンディングの特徴レンディングの特徴は大きく3つです。1つ目は「暗号資産を預ける(貸す)ことで報酬が発生する」点です。値上がり益とは別に、保有中の暗号資産から収益を得る運用、つまり「インカムゲイン」を得ることができます。2つ目は「報酬が暗号資産で支払われることが多い」点です。つまり受け取った瞬間に日本円が入金されるのではなく、暗号資産残高が増える形になります。この場合、税務上は受領時点の時価で利益計上が必要になります(後述)。3つ目は「期間・解約条件・返還条件がサービスごとに異なる」点です。途中解約可否、返還までの時間、最低貸出期間などが実務の運用に直結します。メリット・デメリット以下に、収益性・運用・リスク・税務という観点から、メリットとデメリットをまとめています。区分メリットデメリット収益性安定した利息収益(インカムゲイン)を得られる利息の利率が変動する場合がある運用専門的な知識が不要で、手間がかからない貸付期間中は資金が拘束されるリスク売買を積極的に行わなくても利益を得ることができるカストディリスク(貸付先の破綻リスク)がある税務・受領時点で課税所得・国内事業者でのレンディング収益は消費税の対象運用の手間が比較的少なく、安定した利益収益を得られることから、法人の場合は、運用方針として「保有を継続しながら収益化」しやすいです。一方で、事業者の破綻や返還遅延などのリスクがゼロではなく、貸付期間中は売却・移動ができず、急な資金需要や相場急変に対応しにくいなどのリスクがあります。また、報酬は「受領時点で課税所得」になることに加え、貸し付け中の暗号資産でも法人は期末時価評価の対象になり得ます。さらに、国内事業者を利用しての暗号資産レンディングのレンディング収益は、消費税の課税対象になり得る点も要注意です。レンディングの仕組みやメリット・リスクについては以下の記事もご覧ください。暗号資産(仮想通貨)レンディングとは? 仕組みとメリット・リスクビットレンディングの特徴とは?では続いては、国内事業者の仮想通貨レンディングサービスの一つである「ビットレンディング(BitLending)」の特徴について説明します。ビットレンディングは、利用者が暗号資産を事業者に貸し付け、貸借料(賃借料)を暗号資産で受け取るタイプのサービスです。貸借料は月次で支払われる設計で、毎月1日に貸出残高へ加算される形が規約上示されています。特徴1. 通貨ごとの利率が高いビットレンディングの最大の特徴は利率が高いことです。ビットレンディングの公式サイトでは、通貨ごとに貸借料率(年利率)が提示されています。「現在の貸借料率」として、通貨ごとの年利率(APY)が掲載されていて、2026年1月26日時点で、BTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)が8%、USDTやUSDCは10%など、他社のレンディングサービスと比べても高い利率になっています。また、貸借料率は「月次更新」と明記されています。特徴2. 返還手数料が年4回まで無料ビットレンディングは、暗号資産の返還(出金)にかかる返還手数料について、年4回まで無料と案内されています。5回目以降は通貨ごとにネットワーク手数料相当が差し引かれる形で、BTC0.00015、ETH0.0015、USDT(TRC-20)1などの目安が掲載されています。法人目線では、期末前に返還して売却まで行うか、それとも期末をまたいで貸し付けたままにするか、といった判断に「返還コスト」が絡むため、年4回無料の設計は実務上のメリットになりやすいですね。特徴3. 紹介者特典があるビットレンディングには紹介プログラムがあり、紹介を受けた側は「6回分の貸借料支払い」について貸借料率が10%アップする特典が案内されています。紹介した側も、紹介を受けた方が受け取る紹介特典と、同額の貸借料が付与される仕組みになっています。ビットレンディング収益にかかる法人の税金ルールここからは「法人がビットレンディングでレンディングを行う」前提で、税務の考え方を整理します。結論として、受け取るレンディング収益は「法人税」の計算に含まれます。また、暗号資産の貸付けの利用料は消費税の課税対象になり得ます。ただし、詳細は個別事情で変わるため最終判断は顧問税理士等へ確認してください。法人税法上の仮想通貨の基本的な取り扱い法人の暗号資産取引の利益は、個人のように譲渡所得や雑所得に分けず、法人の所得(いわゆる事業所得)として「法人税」の対象になります。暗号資産を売却・支払・交換した場合は「暗号資産の譲渡」として譲渡損益を計算します。区分法人税税率法人税23.2%(中小は800万円以下の部分15%)地方税含む実効約29~34%が目安(中小で年800万円以下の所得の部分の実効約21〜23%)損益通算他事業の所得と通算可損失繰越最長10年(青色)。中小は原則全額相殺可また、期末に保有する暗号資産は、一定の要件を満たす場合(活発な市場が存在する等)に期末時価評価の対象となり、評価損益を益金・損金に入れる必要があります。詳しくは、以下の記事もご覧ください。【企業/法人向け】仮想通貨の税制とは?個人(総合課税)との違いやメリット・期末評価・含み益・計算方法・注意点を分かりやすく解説レンディング収益の課税タイミングレンディングで得た報酬(貸借料・利用料相当)については、「暗号資産を取得した時点」で課税所得が発生し、その時価を基に利益を計算します。つまり、ビットレンディングで報酬として暗号資産が付与された場合、付与(受領)されたタイミングで、付与された暗号資産の時価相当額を利益計上するイメージになります。貸し付けている仮想通貨の含み益の時価評価について「貸し付けているから、期末に保有していないのでは?」と考えがちですが、貸し付けている仮想通貨も期末時価評価の対象となります。国税庁FAQでは、貸付期間中に使用料を得られ、かつ価格変動リスクを負うこと等から、貸し付け中でも期末時価評価の対象となり得る旨が示されています。具体的には「貸付けをした暗号資産の期末時価評価」のQ&Aで、期末時価評価の対象となり、評価額と帳簿価額の差額を益金または損金に算入することになる旨が示されています。消費税の取り扱いまず、国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡は、支払手段等の譲渡として消費税が非課税とされています。一方で、暗号資産レンディングの利用料については、国税庁FAQで「利用料を対価とする暗号資産の貸付けには、消費税が課される」と明確に示されています。つまり、法人がビットレンディングで受け取る「貸借料(暗号資産で受領)」は、消費税は課税取引となります。レンディング収益の損益計算方法と仕訳レンディング収益が発生した場合の会計処理は、基本的に「受領時に利益計上」→「売却時に譲渡損益計上」の2段階で整理します。法人の場合、利息として受け取った暗号資産も、受領時点で取得した資産として帳簿に載せるため、以降の売却時に差額が損益になります。レンディング収益を受け取った時利息収益は「暗号資産売却損益」や「受取利息」などで計上します。同時に、受け取った暗号資産は資産(例:暗号資産)として計上します。損益計算方法受領した暗号資産数量 × 受領時点の時価(JPY換算)= 利息収益このとき算定したJPY換算額が、受領した暗号資産の「取得価額(帳簿価額)」にもなります。(例)2026/1/31に利息として0.01 BTCを受領。受領時のBTCレートが1BTC = 14,000,000円利息収益 = 0.01 × 14,000,000 = 140,000円仕訳消費税については、課税事業者の場合「レンディングの対価」に該当する整理になり得るため、税抜処理なら仮受消費税等の計上も検討します。ここでは、「税込処理」と「税抜処理」の2つの仕訳パターンを紹介します。また、消費税率は10%として計算します。税込処理借方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産対象外140,0000貸方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産売却損益 or 受取利息課税売上140,00012,727税抜処理(別記)借方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産対象外140,0000貸方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産売却損益 or 受取利息課税売上127,2730仮受消費税課税売上12,7270利益分を売却した時受け取った利息(暗号資産)を日本円に換金(売却)した際、売却時と利息計上時(受領時)の時価に差額があれば、その差額を「利益」または「損失」として計上します。要するに、受領時に計上した取得価額(帳簿価額)と、売却対価との差額が譲渡損益です。損益計算方法売却代金(手数料控除後)− 売却した暗号資産の取得価額 = 売却損益(例)上の0.01 BTC(取得価額140,000円)を後日売却。売却時のレートが1BTC = 15,000,000円売却代金 = 0.01 × 15,000,000 = 150,000円(手数料は一旦無視)売却益 = 150,000 − 140,000 = 10,000円※売却手数料がある場合は、売却代金から控除するか、支払手数料として別計上します。※一般的には、受領した利息分と元本分の暗号資産をまとめて管理するため、移動平均法や総平均法など採用している評価方法に従って「売却した数量の取得価額」を算定します。仕訳ここでは、上記の例(0.01BTCを取得価額140,000円で計上→後日150,000円で売却)を前提に、売却時の仕訳パターンを示します。なお、売却時点では「消費税の課税関係は基本的に生じない(暗号資産の譲渡は非課税)」ため、税区分は「対象外(非課税)」で処理するケースが一般的です。売却益が出た場合(150,000円で売却、取得価額140,000円)借方:勘定科目税区分金額(円)税額預け金対象外150,0000貸方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産対象外140,0000暗号資産売却損益対象外10,0000売却損が出た場合(例:130,000円で売却、取得価額140,000円)借方:勘定科目税区分金額(円)税額預け金対象外130,0000暗号資産売却損益対象外10,0000貸方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産対象外140,0000暗号資産の売却手数料がある場合(例:売却代金150,000円、取得価額140,000円、手数料500円)税込処理借方:勘定科目税区分金額(円)税額預け金対象外150,0000支払手数料課税仕入50045貸方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産対象外140,0000暗号資産売却損益対象外10,0000暗号資産対象外5000税抜処理(別記)借方:勘定科目税区分金額(円)税額預け金対象外150,0000支払手数料課税仕入4550仮払消費税課税仕入450貸方:勘定科目税区分金額(円)税額暗号資産対象外140,0000暗号資産売却損益対象外10,0000暗号資産対象外5000実務では、取引所手数料の内容や請求形態によって税区分が変わることがあるため、会計処理ルールは顧問税理士とすり合わせることをおすすめします。まとめビットレンディングのような暗号資産レンディングは、売買をせずに利息収益を得られる一方で、法人の場合は「受領時点の利益計上」「貸付中資産の期末時価評価」「消費税の課税関係」といった論点が重なり、処理が複雑になりがちです。実務では、まず受領時の時価をどのレートで円換算するかを統一し、受領時の取得価額を基準に、売却時の譲渡損益をブレなく計算できる状態を作ることが重要です。さらに、消費税については税込処理・税抜処理の選択で仕訳が変わるため、会計処理方針を決めたうえで運用を固定化しておくと、決算時の手戻りを減らせます。レンディングは継続的に収益が発生する運用だからこそ、最初にルールを固めておくことが最大のコスト削減になります。不明点が残る場合は、国税庁のFAQや顧問税理士と確認しながら、法人として一貫した処理を整えていきましょう。関連記事仮想通貨(暗号資産)のレンディング収益とは?メリット・デメリットから税金計算方法まで分かりやすく解説【2025年版】仮想通貨は持っているだけで課税される?確定申告前に必ず押さえたい6つの落とし穴仮想通貨を安定資産として保有したいと思ったら?長期目線でリスクを抑えるコツとおすすめの方法を紹介【暗号資産】